スピーカー配線交換・・・「A7と向き合い始めます。」

 

いつもブログをご覧いただきまして
誠にありがとうございます。

本日は前回までの続きになります。
ご覧になっていない方は下記をご覧ください。

ALTEC A7を聴く。

 

私がお目にかかったA7と言うスピーカーは
ミュージシャンからミュージシャンへと
大切に受け継がれてきたスピーカーです。
生の音を再生してきた歴史を背負っています。

このスピーカーは
「毎日のようにホーン・ドライバーの位置を
変更しなければ音が落ち着かない」

言われてきたくらいにデリケートです。

出音のバランスが変化するたびに
唯一調整出来るホーン・ドライバーの
位置(前後と高さ)を移動させ
その日のベストをさがしだします。

能率103dbを誇る超・高能率スピーカー
微妙な音と言えども変化が大きく
扱うのにとても苦労します。

私がよく耳にする他で奏でられるA7の音は
ほとんどが高能率の欠点を隠す為に
音は抑え込まれナローレンジで丸い音です。
『A7らしさ』が失われた音に感じていました。

A7はサイズが大きいため一度設置すると
簡単に移動できなく部屋に設置する場所を
確保する事も大変なほどです。

今回は位置を変えたり高さを変えるという
セッティングは限られていたため
『設置環境に合わせてケーブルをつくる』
という方法を選択しました。

 

・解決しなければならない出音の問題点

1)ホーン・ドライバーの位置を
毎日移動しなくてもすむようにしたい。
(電気的な課題)

この現象は、スピーカーコードを流れる電圧を
安定させなければなりません。
電圧と電流との位相差も音の変化の要因です。
アンプやスピーカーに原因がないことは確認済み。

2)低音楽器の基音と倍音の
バランスを整えたい。(設置の課題)

ベースの基音は41.2Hzと決まっており
一番太い弦を開放した状態で
音を出した時の一番低い音です。

基音があれば倍音もありますので
基音と倍音のバランスを楽器の生音の
バランスに近づける事が課題です。

基音も含めて、それよりも低い周波数の
低音の量が出過ぎている為に、
倍音がかき消されてしまっています。

緩い低音。ダブついた低音。
そして、その量が多すぎる。」
ということになると思います。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

A7のためのスピーカーケーブルは
弊社で80時間の慣らし運転が終了です。

さっそくA7に接続して音を確認します。

予想はしてはいましたが
新たなシステムで試聴すると
見事にバランスが崩れて
壊れかけの蓄音機のような音・・・。

ホーン・ドライバーは ”シャラシャラ!”
薄っぺらい音がしており、
低音は”ポコポコ!”としています。
まるでオモチャの太鼓の音のようです。

さすがに私も、少し青ざめてしまいました。

 

試聴室で見事に鳴った結果を信じ
しばらくは待つしかありません。

10分・・・30分・・・40分・・・
どんどん音に厚みが増して
ベースらしさと音階が感じられます。

少しは弱まってきましたが
相変わらず高域にはシャラシャラと
感じてしまう薄っぺらい音が残ります。

しかし・・・・・

気がつくと、ボーカルが前面で実物大と
感じるリアルさをもって、浮き立っています。

トランペット奏者は
明らかに左後方にいる事が確認できます。
しかし、その音は後方から前面へ向かって
一直線に飛んできます。

この飛んでくる音には驚かされました。

『まるで音が空気を切り裂き飛ぶように
目に見えない音の通り道があるように
感じてしまったのです。』

『後は12kHzから上の
シャラシャラした音さえ消えれば』

 

楽曲や録音の違いによりますが
低音の質がバスドラムの革の音が乾き
革が揺れている様を感じられるように
なってきました。

その音が出始めた頃は高域も落ち着き
わずかに明るいキャラクターを残すのみ。

ホーン・ドライバーの正確な位置決めをして
さまざまな楽曲を聴き慎重に進めます。

やはり、先人の方々が口を揃えるように
調整は5mm単位…もしかしたら
もう少し細かいくらいでしょうか。

その位置が決まると明らかに
以前の出音とは大きく変わりました。

『まるで空気が見える感覚のように
空間の大きさが確認できるくらい
リアルな音です。』

そして、いよいよ
ベースの基音と倍音の聴こえ方の確認。

ウッド・ベースとギターの低音に
狙いを定めて楽曲を選びます。

『通常生録音では、基音1に対して
2倍音は5~8倍程度でしょうか』

それを目指したいのですが
『小さな音である基音でも明瞭に
聴こえなければなりませんが、こ
こから先は機材の能力次第です。』

 

一か月後…

今の所は、現代の大型フロアー型SPとも
十分以上に肩を並べる事ができる
”ワイド・レンジで高分解能”
”ハイスピードでリアルな生音”を
感じられる音がしております。

過去から私が聴いた事のある
どのA7のようにナローな周波数特性とは
まるで違います。

このスピーカーから流れ出る生LIVEの音は
楽器の音や演奏に込められた思いを
ただただ大きな音にしただけの音に
成長しているようです。

業務用24CHデジタル・ミキサーの能力は
凄まじい事を実感しました。

そして…

『トランジスター・アンプと
50年前の真空管アンプとを交換した時の
表現の違いも見事です!』

『しかし毒ですね!
この世界を知ってしまうと
自分好みのアンプを探したくなります。』

『やはり、オーディオに取って
アンプは命ですね!!』

 

今回のA7を鳴らしているプレーヤーは
パソコンのハードディスクです。

機材に供給されている電源は100Vですが
オーディオ専用に引き込まれています。

電圧はトランスを使用して100Vを115Vに
昇圧されていますがアイソレーションはなし。

 

機材間に使用されている配線類は
弊社試聴室で使用する物と同じですが
接続方式にバランス、アンバランスの
違いがあります。

 

今回は、イコライザーやフィルター類の
調整機能を一切使用しておりません。
アナログ的な手法を用いてAudio再生と
生Liveの両立を目指しました。

A7の前オーナーのプロ・ベーシストの方も
ご自身が演奏されているLiveを
感じていただければ幸いに思います。

本当に良い機会と経験でした。

 

ここに来て、微かな夢が芽生えてしまいました。

feelを取り付けたCar Audio機材で
この100Vで動作している業務用機材に
挑みたいという衝動に駆られてしまいました。

ささやかな夢が叶えられるように
これからも頑張りたいと思います。

弊社の製品は
『私の音に対する情熱と拘りの結晶』
であることが伝われば幸いです。